看取り士日記 (271) ~夢の中、愛に包まれて~

看取り士日記 (271) ~夢の中、愛に包まれて~

2017年10月21日(土)7:19 PM

細く可憐な彼岸花が満開の中で、静岡への講演会。

穏やかに導かれるままに講演会を終える。

会場の皆様が引かれた後に、一人の女性が涙ぐんで近づく。先日、愛するご主人をその腕の中に抱いて看取られた。

1ヵ月前に、こんなご連絡をいただいた。

「3年前に余命宣告を受けました。当初は治るのではと気楽に構えておりました。しかし治る病気ではないこと、体力の限界が来ていること、主人の会話が死のことばかりであること。主人は自宅で私と2人きりで最期を迎えたいといつも言っています。一人で主人のことを考えると、不安以外ありません」

大事なご主人の最期を覚悟しなくてはと思うのだが、何を相談すればいいのかもわからず。

主人に何ができるのかを教えてください、不安やわからないことをどうすればいいのか教えてくださいと、混乱を隠しきれない様子。

愛するご主人の最期を幸せにと思いながらも、心が乱れ、死という、重い荷物をどう心に収めて良いのか分からないという彼女だった。

ご相談に対応、彼女の心が少しずつ整う。

そしてお昼12時過ぎ、彼の大好きなカレーを作ろうと野菜を切り、鍋を火にかけながら、ご主人の手首に手を添える。二回トントンと脈を打つ。このトントンと言う脈は彼女がご主人の体を寝かしつけるようにしていたことの、彼なりの返事のようだったと言う。

講演会場で涙となぜか笑顔で抱きしめあった彼女の中に、確かにご主人の笑顔が見えた。

「問い合わせた時は、恐怖以外はありませんでした。相談をしているうちに、少しずつやるべきことが分かりました。最期は夢の中のように愛が溢れていました。満足です」

心が整うことで、旅立ちは愛の中でと教えてくださったご夫婦に感謝 合掌



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