看取り士日記(325)~深夜の派遣に対応して~

看取り士日記(325)~深夜の派遣に対応して~

2022年04月13日(水)10:49 AM

 

梅の花が香り始めるころ、一本の電話をいただく。
「お母様の体調があまり良くない……」と。

 

お母様をご自宅に連れて帰られたのは、コロナが全国に広がり始めたころ、面会規制も厳しくなり、会うこともできなくなってきていた頃だった。
お母様の旅立ちが近くなってきたと、訪問医の先生からお話があり、至急娘様がご家族様に連絡をされ、その日のうちにご家族の皆様はご自宅に到着された。
ご兄妹で話し合われ、母だったら延命治療を望まないと、お母様の立場に立って考えられ決断される。

 

お母様との温かなお時間をご家族で過ごされ3日が過ぎようとしていた深夜2時50分、「母の呼吸が静かに変わりました」とお電話をいただく。直ぐにご自宅に伺い玄関を開けるとお部屋は温かく靄がかかったように見えた。娘様がお母様を抱いておられる。お二人がとても輝いていて光に包まれ、お部屋全体が美しい空間となっていた。

 

訪問看護師さんにも直ぐに来ていただき、ご家族様もご一緒にエンゼルケアに入る。お母様のお顔、手、脚と丁寧にお母様に話しかけながらゆっくりと時間は過ぎてく。

 

息子様、お孫様、娘様と看取りの作法をお伝えし、お体に触れていただき、手や脚が冷たくなってきたが、触れることでまた温かさが戻ってくる。娘様の「お母さん、ありがとう」と話しかける言葉が、優しくて温かくて、言葉にも愛がたくさん詰まっていた。お母様のお得意なお料理がおいしかったこと、しっかり者のお母様だったこと、お孫様と過ごされた思い出などお話しくださる。ゆっくりと、ゆっくりと温かな時間は過ぎていき、時が止まったようだった。いつの間にか外が明るくなっていた。

 

お母様はご家族様とご一緒に、これからも生きていかれる。お母様、ご家族様が教えてくださった、看取りという最期の時の尊い空間、生きていくということの尊さ、すべてに感謝 合掌

 

担当看取り士 梛野祥子

文責 柴田久美子

 

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