看取り士日記(334)~最期の願い~

看取り士日記(334)~最期の願い~

2023年01月16日(月)2:42 PM

 

枯れ葉舞う小春日和。

延命治療は希望しない、自宅に戻りたいというお父様の願いを叶えたい。看取り士相談の後、ご家族(姉弟)は、主治医と相談しながら準備を始める。ソーシャルワーカーのサポートを受け、在宅チーム(訪問医、ケアマネージャー、訪問看護師)が決まる。介護経験のないご家族のサポートとして、看取り士は夜間見守りでスケジュールを組む。

 

しかしながら退院準備中、医師から突然の告知。「今夜かもしれない、それでも自宅に戻る準備を進めますか?」「はい、お願いします」お父様の思いは、ご家族とひとつになっていた。

急遽退院が決まり、その夜のこと。「家に帰って来ようね!今準備を進めているからね。もうちょっと頑張ってね!」病院スタッフに受話器を耳にあててもらい、姉弟ふたりでお父様に伝えたという。

 

退院当日の朝、娘様の計らいで施設に入所中だった最愛の奥様と面会することができ、もう一つの願いが叶う。(しばらく夫婦離れ離れで会えない状況だった)

その後、帰宅時間に合わせ担当看取り士が静岡の自宅に向かう途中、病院で死亡確認との連絡を受ける。

 

その後、住み慣れた自宅へ帰宅。「おかえりなさい」いつも寝ていた布団の中で、ご家族全員がお父様を抱きしめる。小さなお孫さんも優しく触れる。「じじ温かいね」「これがエネルギー?凄いお父さん!みんなに渡したいんだね」「がんばったね」点滴の刺し傷や抵抗したときにできたと思われる痣も、ご家族の手によって癒されていく。交流が始まると、暖房を入れているような暖かさを皆が感じていた。

心肺停止してから8時間以上経ってもからだは温かい。「冷たくなるまで父に触れていたい」と、川の字に眠る姉弟。

 

朝焼けの時間、お布団の中はまだ温かかった。お父様の最期の願い“ご家族にいのちのバトンを渡す”尊い時間に、看取り士も共に立ち会わせて頂いたこと、お父様の深い愛に感謝 合掌

 

担当看取り士 尾美恵美子

文責 柴田久美子

 

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