看取り士日記(280)~映画『みとりし』~
ラベンダーの穏やかな香りが思わず私の足を止める季節になった。
かねてより死生観を同じくする俳優、榎木孝明さんを主演に映画を作ることになった。
榎木孝明さんは私が離島で活動している時、看取りの家「なごみの里」を訪れる。3人の重度の幸齢者様をお預かりし15人の仲間とともに、楽しい暮らしをしていたころだった。最年長のボランティア浜さん(78歳)は彼にこんな話をした。近所に住む息子と孫が訪ねてきて嬉しいことを言ってくれたと。
息子が孫に「ばあちゃんがいるから父さんがいる。お父さんがいるからお前がいる。おばあちゃんがいなければお前はここにいないんだよ。ばあちゃんに感謝しなくちゃ」そしたら孫が小さな手を合わせて「ばあちゃん、ありがとう」って言ってくれてね。嬉しかった」と微笑んだ。
このほのぼのとした光景が榎木さんの心を和ませる。
そんな看取りの家「なごみの里」の頃からずっと変わらず、私はマザーテレサの言葉に導かれている。
私は自分の心の中に死にゆく人々の最後の眼差しをいつも留めています。そして私は、この世で役立たずのように見えた人々が、その最も大切な瞬間、死を迎える時に、愛されたと感じながら、この世を去ることができるためなら何でもしたいと思っているのです。(マザーテレサ)
榎木さんは看取りの家「なごみの里」を発つ時、「柴田さん、あたたかい看取りを映画にしましょう。その時は僕が主演を務めます」あれから10年、その約束を果たす時が来た。
2025年問題と言う大きな日本の危機をみんなで乗り越え、子孫に命のバトンを受け渡せる社会創りの為に。今、映画制作が進められている。
ご縁を頂く、全ての皆様に手を合わせながら感謝、合掌