看取り士日記(296)~間に合って良かった~
萩の花が可憐な花を楽しませる頃になった。
9月13日から全国上映となった映画「みとりし」。この映画を全国で最初に上映決定していただいた有楽町スバル座の、最終上映日前日にトークショーをさせて頂く。
53年という長きにわたる歴史ある映画館に、最後の通常上映作品として「みとりし」を選んでいただいたことに感謝の言葉もない。
受付の女性、案内の女性たち、どなたもがとても優しい微笑みを持って応対して下さった。館内はいつ訪れてもきちんと整理されていて、穏やかで居心地の良い場所だった。多くの方々を癒してきたことが容易に見て取れた。歴史は小さな日常の積み重ねの上にあることを有楽町スバル座さんに教えられた。
そんな旅路の中でも、各地の看取りステーションには看取り相談のご依頼を頂く。
映画では描き切れなかった部分である「看取り士」の仕事の5つ目。
『臨終後のいのちのバトンリレー … 臨終時にいらっしゃらなかったご家族・親族に看取りの作法をしていただくことで、臨終に立ち会えなかったご家族・親族の方にもいのちのバトンを繋ぐこと』
「母の息が止まりました。でも母が大好きだった妹がまだ来ていないんです」
受話器を置いて駆けつけると、お母様を抱きしめる娘さんの姿がそこにあった。「良かった。来てくださって。夢中でした」
そう言って安堵の表情に変わる。膝枕を続けていただき、背中に手を触れると堰を切ったかのように涙があふれる。妹さんが到着。背中に手を入れて温かいところに触れていただき、「間に合ってよかったですね」と声をかける。膝枕を代わって妹さんがなさると、お母様への愛があふれ出し、何時間も“お母さんありがとう”のシャワーの中で過ごされる。
死は終わりではなく、命はバトンすると教え導いて下さったご家族に感謝 合掌
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