看取り士日記(302) ~無償の愛の中で~
うららかな春の日差しの中、空に向かって花水木が咲き誇る。
「施設にて食べられなくなった父を、2日前に自宅へと引き取りました。
自宅で看取りたいのだけど、どうしてよいかわからない」と相談の電話が入る。
気丈にお話をされるが、不安と疲れが混ざる一生懸命な涙声。
施設からの引継ぎ、新しいケアマネージャーの選択、訪問看護の手配などお手伝いをさせていただく。
電話の翌日には担当者会議へ参加。
兄弟、ケアマネージャー、看取り士とこれからの事を話し合う。自宅でこのまま点滴もせずに看取っていいのか、揺れる気持ち。敷地内で同居されている長男、次男様は、昼夜のなれない介護でお疲れと不安な気持ちをお話される。
お父さまにしっかりと触れていただく事を伝え、ベッドで一緒に添い寝をされることをお勧めする。自宅だからできること、「お父さまのぬくもりをたくさん感じてください」とお伝えする。
ご家族様にゆっくりと休んでいただく時間を作るために、無償ボランティア“エンゼルチーム”を、3時間・週4回ご利用していただくこととなる。エンゼルチームはご家族様、ご本人に自宅で安心して暮らしていただくために、何をするわけではなくただ寄り添う。昔で言えば、ご近所のおばちゃんが「ちょっと見てるから安心して体を休めなさいな」という、そんな役割。
エンゼルチーム登録の皆様に活動依頼をする。
たくさんの方から「旅立つ方、ご家族様の力になりたい」と活動可能の連絡が入る。
初回訪問翌日からエンゼルチームの支援を開始。訪問したエンゼルさんからは
尊い時間に寄り添わせていただけることへの感謝の言葉を聞く。
ご家族様からは、「自宅だからこそ、抱きしめたいときに抱きしめることができ、心おきなく触れていられる幸せを感じています。このまま自宅で点滴もせずに看取っていいのかまだ揺れています。でも、こうして支えてくれる方たちがいることで心が穏やかになってきています。ありがとうございます。今は一緒にいられる幸せを毎日感じています。」とのお言葉をいただく。
愛の心で寄り添わせていただく無償ボランティア“エンゼルチーム”は、
ご本人、ご家族様を優しく支えていく。
エンゼルチームの深い愛の行動に感謝 合掌
担当看取り士 白瀧貴美子
文責 柴田久美子