看取り士日記(311)~自分がプロデュースする旅立ち~

看取り士日記(311)~自分がプロデュースする旅立ち~

2021年02月10日(水)5:15 PM

 

店先のチューリップの花が春を呼ぶ。
今回のご依頼者様とのご縁は2年前に遡る。
誤嚥性肺炎で施設から救急車で転送された先の病院で、医師から余命宣告をうけ、私どもにご相談。その後、回復なさった。


今回連絡を受けたのは、施設のかかりつけ医の先生から「看取りが近い」という報告を受けての事だった。ご家族の一番の心配は、コロナ禍にありご家族の面会が、制限されているということ。看取りの時期が近いのに、思う様に面会が出来ないということが辛いとの事だった。数ヶ月ぶりに面会したお父様は、食事をとられていない状態が長くやせ細っていらした。声がけに対してもすでに反応が鈍く、今日明日、何があってもおかしくないと告げられた。二年前は看取りをしていなかった施設だったが、今回は看取り士も立ち会うことも許可を出して下さった。

 

改めて施設側に訪問をする事になった当日、看護師さんから「苦しそうな呼吸に変化しています」と直接連絡をもらう。
お部屋に伺うと、呼吸は明らかに旅立ちに向けての変化をし始めていた。
「苦しんでいるのですか」心配そうに質問されるご家族に、どのような状態におられるか説明することで、安心をしてもらい、触れながらご本人と呼吸を共有していく。家族が見守る中、やがて呼吸は無呼吸が延長し、口呼吸へ。その間もお父様の身体をご家族が囲み、声がけをする。それぞれの想いを口にし、最期の呼吸は長男さんの膝枕の中で静かに迎えられる。
最期の呼吸のあとも、集まった家族一人一人が膝枕をして、感謝の気持ちを伝え、命のバトンを受け取られた。
「私には膝枕をする資格がない」と泣き出したお孫さんは、介護に忙しくしていたお母様に文句を言ってしまった事を悔いていたが、膝枕をして言葉をかけた瞬間に解決できた。

 

旅立つ御本人のお父様がゆっくりと時間をかけて、ご家族との別れをプロデュースしてくださり、家族主体で看取りが出来た事に感謝 合掌。


担当看取り士 町田看取りステーション『千咲土』清水直美
文責 柴田久美子



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