看取り士日記(318)~本当の幸せとは~

看取り士日記(318)~本当の幸せとは~

2021年09月11日(土)6:05 PM

 

向夏の候、突然の電話。「看取り士のホームページを見てお電話させていただきました」と、おずおずとだが、しっかりとした決意あるお声から、とても悩まれてお電話をくださったのだとわかった。早速お会いすることになる。


お母様は、今はまだ入院中だとのこと。コロナの影響で半年前に数分間だけガラス越しに面会したという。このまま会えないで死を迎えるのではなく、大変なことも多いと思うが、自宅に引き取りたい。そう考えたが、ひとりでは不安である。色々調べて看取り士を見つけ、一縷の望みを持って電話をかけたのだという。「ホッとしました」と決断が自信に変わっていく。
いよいよ退院当日、私たちも医療、お母様を支えるチームの一員としてカンファレンスに加わらせていただける。このように看取り士という職業が認められチームとなって支えることができれば、きっと世界が変わる。そう感じた。

 

退院されたお母様は、最初はあまり状況把握ができていないようだったが、住み慣れた自宅に戻り電車の音や匂いで感じて理解なさった様子。お孫さんがいらっしゃると笑顔になる。
5年前から脳血管性認知症の診断がおりており、家族は意思疎通が難しいと考えていた。経口栄養が取れず胃瘻術を考えたが胃と腸の位置が良くなく断念をし、あと1ヶ月の余命が診断されたところで、看取り士を知る。

 

1日3時間、合計14日間のエンゼルチームは本当に助かったし、心強かったと言う。私も何度かご一緒させていただき経験をさせていただいたが、尊いかけがえのない空間、時間、空気を感じさせていただいた。日々忙しく時間や、やるべき事、この後の予定あれやこれやをずっと頭の中で何かを考えている。しかしお母様のお部屋にお邪魔すると別次元、別空間にいるようで、かけがえのない、貴重な一瞬一瞬を感じた。ゆっくりと今を感謝と尊敬の念を思うことができる。


お看取りは突然だが、ご自身がプロデュースされたタイミングで静かに訪れた。ご家族お孫さんがお休みのタイミング。全員一緒の時に苦しまれずそっと息が止まった。やさしく、やさしく旅立たれた。かけがえのない時間、ずっとずっとあたたかいお母様をお孫さんもみんな抱きしめて命のバトンが受け渡された。
1週間後お会いした時に「さみしいけれど、ここに(胸を指し)お母さんがいるから」とおっしゃった姿が忘れられない。

 

本当の幸せとは、心の中に感謝と尊敬の念を思うことと教えてくださった利用者様に感謝 合掌

 

担当看取り士 岡村香織
文責 柴田久美子

 

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