看取り士日記(322)~優しく深い「愛」に包まれて~

看取り士日記(322)~優しく深い「愛」に包まれて~

2022年01月12日(水)5:39 PM

 

シクラメンの花が店先を彩る頃。依頼者の娘様よりお電話を頂く。

「父が肝臓がんの末期で入院中です。実家には高齢の母が一人で、自分は東京で仕事が……。でも、家に連れて帰りたいのでお願い致します」と一気にお話をされる。その勢いからは、何としても自宅で看取りたい!看取るんだ!そういった覚悟を感じた。

その日から退院へ向けて病院との交渉、介護保険の手続き、ご両親への説得。医師からの余命宣告は娘さんだけが聞く。高齢であるご両親の心中を案じ、「流れに任せて伝えます」と胸の内を話して下さる。


退院の日、大好きなコーヒーを飲みながら、家は良い、ブランデーが飲みたいと、お父様らしく過ごされる。ご家族と一緒に過ごされ、大好きなお刺身も召し上がる穏やかな日々が続いた。
しかし、徐々に口から薬を飲むことができなくなり、痛みのコントロールが難しいため、再入院となる。そして、娘様が東京からいらっしゃる予定の日にご容態が急変。すぐに駆け付けたお母様と、東京から駆け付けた娘様の到着を待ち、お母様と娘様のそばで静かに息を引き取られた。


臨終後、ご自宅にご帰宅。私は「今日はお父様を抱きしめていて下さい」と、お母様に抱いていただく。お母様は、ご親戚やお父様のご友人、次々と訪れる方々に「身体があったかいんだ。触ってやってくれ」と明るく勧められる。

訪問された方々は、次々とお父様の背中に手を入れ、「温かい、温かい」と、声をかけて周りに集まる。「寝てるようだ」「笑顔に見える」「わがままで苦労したね。でも、また一緒になるね」等々。
笑ったり泣いたり、朗らかで温かい時が流れる。お父様のお身体は臨終後10時間を過ぎても背中が熱く、翌日に葬儀社へ向かう時までドライアイスは使われなかった。


最期の時は、こんなにも清々しく明るく、感謝の時になることと周りの皆さまに教えてくださったお父様に感謝 合掌

 

担当看取り士 門井孝子

文責 柴田久美子

 

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