看取り士日記(336)~誕生の時のような歓喜の中で~
2023年03月28日(火)3:41 PM
山茶花の花が咲く頃だった。
「そろそろ母が旅立ちそうなので。看取り士とエンゼルチームを要請したい」と連絡があり、翌日自宅へ訪問した。
お母様は脊髄小脳変性症という難病を患い、4年前に自宅へ呼び寄せ生活を共にしていたが、連絡のあった1週間前頃から食事が食べられなくなっていた。契約から旅立たれるまでの12日間のうち、初日と最期の日以外は無償ボランティア「エンゼルチーム」が傍に寄り添う。
ご自宅ではお母様のご意向を一つ一つ確認し、尊厳を守りながら実の親子だからこそ本音を出し合う様子を拝見し、夜間の事等話を聞かせていただいた。お互いに様々な思いや感情が残っていた。
お母様も、お迎えや死を受け入れるまでの行程で不安になる。身体の変化に注意しながら心に寄り添った。私はお母様がご自身の最期をプロデュースされるのを拝見し、娘様の心が決まるのを待っておられたように感じた。
そして看取りの時、「お母さん、もういいよ。お母さん頑張ったね。ありがとう」と言いながら看取りの作法(ひざ枕)をして下さった。空間は愛で満たされ、今までのことが全て許し許される誕生の時のような歓喜の時間となった。
初七日の訪問に行くと「看取りの作法をするのにとても大きな覚悟が必要だった。頭ではわかっていても感情が揺れた」と話してくださった。
看取りとは、共同創造していく中で魂と魂で感じあう感性を育み、関係性がより良く変化し、大きくて大切な宝物を手渡せる慈愛の世界そのものだと教えて下さったお二人に心から感謝 合掌
担当看取り士 藤原利恵子
文責 柴田久美子