看取り士日記(344) ~再誕生の儀式~
看取り士日記(344) ~再誕生の儀式~
看取り士である娘様のご依頼で、「余命1か月の母の看取りをお願いしたい」とステーションに相談の電話が入った。
グループホームに入所中であり、軽い認知症と癌を患い排尿、便から出血は有るが痛みの訴えはない様子。
娘様は幼少期以降からのお母さまとの心の溝から、余命1か月の母親に心を寄せる事が出来るか?看取り士の取得をしたものの寄り添えるか?お母さまに触れられるか?と不安を持たれていた。
ご依頼者様(娘様)と共に初めて訪問、お母様はしっかりとした口調で挨拶をされ、娘様は不安げな様子でしたが、布団から手を出されたお母様に自然と手を握られ、娘様はご自身のとった行動、お母様の様子に驚かれる。
2回目の訪問では前回と違い、声かけを2人でするものの「もうこんでいい!」など強い口調で別人のようだった。
3度目の訪問時では前回訪問時より、弱っている様子で目は閉じたまま、娘様や看取り士の声掛けは聞かれている様子、この日はお母様の好きな美空ひばりの悲しい酒をYouTubeで検索し一緒に聞いた。聞いてる途中から穏やかな表情になられた。その日の夜から急変、3日間呼吸は止まっている状態なのに酸素飽和度は84~100 脈拍70~120を繰り返すし身体も冷たくなっていた。
その間ご家族様(お孫様 ご主人様 娘様)でお母様に寄り添い、思い出話などをされ、お母様も大切な方々を待たれ、旅立たれた。
娘様は、ゆっくり二人だけの時間が有り看取りの作法を実践された。「人は意識で何でもできる 不可能はない 奇跡はある、と母から教えられたような気がする。母を看取った事は私自身の再誕生の儀式だった、看取り士は助産師みたいですね。」との言葉を頂いた。
看取り士として初の経験だったが、素直な気持ちで向き合う事で娘様とお母様のほどけかけている紐がしっかりと結び合い、それぞれの新たな旅立ちが出来たのではないかと感じた。最後まで寄り添う事が出来、感謝の気持ちでいっぱいです。ご縁に心より感謝 合掌
担当看取り士 大迫 雅子
文責 柴田久美子