看取り士日記(349) ~ペット看取り士として~
向日葵の咲き始める初夏の頃。
20歳のシニア猫さん。
3か月前「その子の好きなように猫らしく旅立たせてあげたい、でも、看取るのが怖い」とのご依頼だった。
1週間前頃よりご飯の量は激減し、シニア猫さんに寄り添いながら、徐々にご家族の覚悟も決まっていった。
一本の電話が鳴った。
「柴田さん、もうダメかもしれません。」逼迫したお声だった。「感謝の気持ちを伝えてください。」とお伝えすると、お母様は旅立つまで、ずっとシニア猫さんに話しかけ、撫でられた。シニア猫さんとご家族様の濃厚で愛情豊かな時間。
愛溢れる温かな空間に包まれ、シニア猫さんは立派に旅立たれた。
帰宅されたお子様、お父様にも変わるがわる抱っこしてもらい、シニア猫さんの身体に感謝し、「まるでまだそこに居るようだ。」と話された。ご家族様には看取りの作法を行って頂き、ドライアイスは使わずに三日三晩寄り添われた。
旅立った直後は、悲しみが深く、「もう猫は飼わない。」と話されていたお母様。「これからはシニア猫との思い出と猫と言う種に感謝して生きていきます。」との事で訪問は終了となった。
その後しばらくして、一本の電話がかかってきた。
「シニア猫が旅立ってから、ずっとプラスの死生観の事を考えていました。シニア猫と共に生きた事がもう一本の私の軸になるんですね。今日の夕日は一段と輝いて見えます。」と感動の涙と晴れやかな声でお話しされた。
シニア猫さんからもらった無償の愛を次に繋げていきたい、と力強く前を向いて歩いていかれる姿は清々しいお声に変わっていた。
今、お母様はペット看取り士となった。
旅立った後もゆっくりと時間をかけて寄り添う事。それが大きな生きる力に変わる事を教えていただいた事に感謝 合掌
担当ペット看取り士 柴田久美子