看取り士日記(350・ご家族様による) ~主治医に抱かれて~

看取り士日記(350・ご家族様による) ~主治医に抱かれて~

2024年05月14日(火)12:01 PM

 

2023年8月、退院に向けての話し合いの日、母の容態が変わった。残された時間は長くない事が解った。 コロナの影響で面会制限もありそばにいる事もできず、やりきれない時間の中で看取り士山口さんに連絡をした。 私たち親子の最後の時間に寄り添って欲しいと。整理がつかない複雑な気持ちの私を受け止めてもらう。


二日目の夜、病院からの電話、急いで向かった。 間に合わなかった。看護師さんから「娘さんの到着が解った時でした。」と。 それでも 「ゴメンネ。 かぁちゃん。」と思う気持ちでいっぱいの私に山口さんは「お母様の内では間に合っています。出来る限り触れてあげてて。」 と。息を引き取ったばかりの母を労うように家族みんなでその体温を感じ合う。 そして自分達で抱いて帰りたいと伝えたところ、病院側も理解ある対応をして下さる。 看護師さんと共に主治医もいっしょに母を抱える。 母の最後に手を差し出しずっと頭を下げ見送って頂く。

 

やっと帰って来れたね。 兄から順番に膝枕での作法を教えて頂き、私たちは体に触れながら母の表情が変わった事に気づいた。開いていた口が閉じている。 微笑の顔に変わっていく。 その顔を見て私の緊張も解けていった。 そして背中に手を入れ改めて体温を感じた。“あったかい”その温もりはとても心地よく優しい。 懐かしい記憶とリンクした。 ただ触れていた手は真っ赤になっていることに驚いた。「お母様が放出しているエネルギーです。」 と。冷たくなる前に身体に触れる事ができて母が生ききったエネルギー。 この作法を知れた事、体感できた事は母からのギフト。 これが命のバトンを受け取れた瞬間だったと思います。

 

朝を迎え葬儀屋への連絡もゆっくり。 ドライアイスは極力使用せず大好きだった香りの中で、ここで生活していた時のように、会いに来て頂いた方にも触れてもらい、おしゃべりをし、泣いて笑って過ごした五日間。 看取り士さんに寄り添ってもらえた事で不思議な体感が私の内で母が存在する感覚となり、悲しいのに悲しくない別れができた。


私たち親子を改めて繋げてもらえた事に感謝 合掌

御家族 原山千寿子様
文責 柴田久美子

 

 

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