看取り士日記(352) ~永遠に共に生きられる力~
ある早朝、かねてからご相談を頂いていた男性から「母が病院で亡くなりました。どうしたらいいですか?」とご連絡を頂いた。昨日、医師からお母様の余命1カ月の宣告を受け「看取り士派遣サービスをお願いします。」とご兄弟でお母様を看取る決心をなされてから12時間後という急な旅立ちだった。
ご自宅に到着後、ご親族の皆様にご長男様が看取り士を依頼下さった想いをお伝えし、ご子息とお姉様の6名が、看取りの作法でお別れの時間をゆっくりと過ごされた。
「こんなお別れなんて考えたことがなかった、ありがとうございます。」「温かい。まだ生きているみたい。」とまだ残る身体の温もりを、涙と笑顔と共にそれぞれが受け取られた。
「県外から向かっている4番目の叔母(お姉様)が到着するまで待っていて欲しい。」とご長男様からお願いされそのまま待機した。
遅れて駆けつけたお姉様は「間に合わなくてごめんね。」と何度も繰り返しながら愛しくてたまらない妹様を全身で抱きしめられた。
ドライアイスを入れていないお身体は驚くほど温かく「お身体が温かいうちはまだ居られますよ。間に合って良かったですね。」とお伝えすると「間に合ったんですね、良かった。」と安堵と喜びの涙を流された。
1年前にお父様を亡くされたまだお若い息子様が、愛するお母様を見送る深い悲しみと5人姉妹の最愛の妹(末っ子)を先に送らなければならないお姉様達の悔しさでいっぱいだった空間も、故人の愛と温もりを受け取られた看取りの作法(お別れ)の後は日の光がいっぱいに広がる雲ひとつない空のように、すっきりと晴れていた。
最愛の存在が目の前から居なくなる深く辛い悲しみや悔しさを受け止め、愛と感謝の気持ちに変えられるこの息子様やお姉様達の姿を通して、私たちの中にある「永遠に共に生きられる力」を感じさせて頂く。生前と変わらない故人の溢れる愛が見えなくともいつもそこにあり、これからもご遺族様を包み込んで下さることを教えて下さったお母様の大きな愛に感謝 合掌
担当看取り士 石原由美子
文責 柴田久美子