
看取り士日記(363)~まるちゃん、ありがとう~
紅葉が美しい11月の頃、霊園スタッフの知人から1本のお電話を頂く。
「妹家族の飼っている4歳のポメラニアンの犬(まるちゃん)が、家でご飯を誤嚥し
窒息死してしまいました。このままだと妹家族が、うつになってしまうかも。助けてくれませんか?」とご依頼を頂く。
夜、お家に伺うと何とも言えない空気の中、ベッドに横たわっているまるちゃんの姿。最初にまるちゃんの傍にいき声をかける。沈痛なご家族様に、看取り士の死生観、命のバトンのお話をお伝えする。誰も触れていないご家族様。最初にまるちゃんを抱きしめ、すぐ妹様の膝の上で抱っこをして頂くと、「まるちゃん、ごめんね。」と泣きながら声をかけられる。まるちゃんから伝わってくるのは「お母さんは、悪くないよ。責めないで」と。
離れていたお子様達にも傍で触れて声をかけて頂く。涙も止まっていたご家族が、まるちゃん、と泣きながら「まるちゃん、ありがとね、楽しかったよ。」と言葉が少しずつ変わる。
近所に住む姉妹のお母様も駆けつけ「まるちゃんは、どうして!」と悲しみでいっぱいのお母様に深い愛情を感じながら、お母様にも抱いていただく。黙って見守っていた妹様の旦那様は「まるちゃん、ありがとね。」と優しく抱いてくださる。まるちゃんのお顔は、安心した穏やかな顔に変わる。自分のせいでは、と責めていた妹様も看取りの作法、初七日、四十九日の過ごし方を知り気持ちが少し和らいでいく。
次の日、ご家族様は埼玉まで用事があり、まるちゃんは1匹お留守番になると。
そんな中、臨終後の大切さをお伝えすると、次の日もまるちゃんも一緒に連れていったご家族様。
四十九日訪問に伺うと、泣きながらも笑顔の妹様。「埼玉での道中、ずっと抱っこしてまるちゃんと対話した時間のおかげで、次の日に写真まで整理でき悲しいけれど、不思議と受け入れています。火葬まで、皆で触れて抱っこをしたら硬直していた体が、最期まで柔らかく抱きしめて送ることができ、いいお看取りができました。」とどん底だった状況から、まるちゃんを想いながら前を少しずつ向いているご家族様。まるちゃんはご家族様とこれからもずっと一緒。
たくさんの無償の愛を渡してくれたまるちゃんとご家族様に感謝 合掌
担当ペット看取り士 山口 朋子
文責 柴田 久美子