一般社団法人日本看取り士会/一般社団法人日本看取り士会

看取り士日記(369)~全国フォーラムの祈り~

2025年12月08日

 

岡山大学医学部キャンパス内の広々としたホールで、第12回「日本の看取りを考える全国フォーラム」が開催された。
オープニングは日舞「助六由縁江戸桜」。舞う扇の音が静かに響き、命の舞台の幕が上がる。

今回のフォーラムは、私にとって特別な大会となった。
13年前、離島の「看取りの家」での出来事をきっかけに人生の大きな壁の前に立った私に、東京大学名誉教授・上野千鶴子先生が声をかけてくださった。

「あなたは看取りの家の学びを“看取り学”として体系化し、本土に広めなさい。2040年、この国では47万人もの“死に場所難民”が生まれる。そのために尽力しなさい。」

その言葉に背中を押され、私は看取り学を立ち上げた。
上野先生が今回の基調講演で登壇された。演題は「住み慣れた地域で最後まで」。
ご自身も「おひとり様」の後期高齢者として、長年の研究データをもとに、高齢者の本音と介護保険制度の危機を語られた。
静かな言葉の一つひとつに、社会の土台を支える慈しみがあった。

特別講演では、経済産業研究所コンサルティングフェロー・藤和彦氏が「多死社会の到来と看取り文化の復活」をテーマに、支え合う社会の再構築の必要性を語られた。
続くシンポジウムでは、看護学生も登壇し、「愛されていると感じる旅立ち」をめぐって討論が交わされた。
理想の最期は人それぞれであり、誰もが“自分らしく生き抜く旅立ち”を望んでいる。
そこに看取り士会が掲げる「最期くらい、わがままに」という言葉の意味が深く重なる。
静けさと情熱が交差したこの日、会場全体が“命を見つめる祈りの場”となった。来年の全国フォーラムは岐阜市で開催。池川明先生をお招きし、新たな命の語らいが始まる。
ご参加頂いた皆様に感謝、合掌

 

文責 柴田久美子

 

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