一般社団法人日本看取り士会/一般社団法人日本看取り士会

看取り士日記(376)~大いなる計らい~

2026年07月10日

「母がついに帰宅しました。どうしたら良いでしょうか。」
ゴールデンウィークを迎える頃、娘様よりご連絡をいただいた。お母様が全ての治療を終え、施設からご自宅へ戻られた。

訪問した時、お母様は静かに横たわっておられた。20年も前から準備をされていたご自身の旅立ちのための品々を見せていただく。着物や六文銭、お遍路で印を集められたご朱印着、そして余計な医療は必要ない、と記された遺書。

娘様はお母様を看取りの作法で抱きながら、お母様とのこれまでの歩みを話してくださった。
「母は今まで、私よりも兄のほうを可愛がっていました」。
しかし、介護の日々の中で、お母様はこれまでのすれ違いを丁寧に謝罪されたという。
「これまでお母さんと呼ぶことがなかった。だけど今はお母さんと呼べる。お母さんが可愛い」。
数時間後。母娘の暮らしのひとときの中で、お母様は静かに息を引き取られた。ゆっくりとお母様を抱き続けたその夜、娘様はお母様と添い寝をされた。

翌日には、娘様のお兄様が帰省され、お母様を抱いてくださった。
娘様はお兄様との関係に長年難しさを感じておられたとおっしゃるが、お母様のそばで語り合うお二人は、とても穏やかな様子だった。

旅立ちから丸三日後。お孫様ご一家が帰省。
15歳の曾孫様は、お顔を見つめながら1時間にわたり、同じ姿勢でひいおばあ様を抱き続けられた。

「何か思い出はありますか」とお尋ねすると、
「アンパンマンミュージアムに一緒に行きました」と静かに答えてくださった。

お母様が若い世代の方に生き切る姿を見せることによって、また一つやさしい社会を作ってくださった。
大いなる計らいでご家族を包み続けてくださったお母様の愛に感謝、合掌

担当看取り士 塩尻純
文責 柴田久美子

 

 

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