2026年08月08日

今日も、ボランティアさんが利用者さんのために赤い糸を紡いでくださった。細い糸に込められた、祈りと真心。
以前、あるご家族が教えてくださった。ベッドで眠るお母様と赤い糸でつながり、互いの腕に巻いて休まれた夜のこと。言葉が少なくなっても、糸が「ここにいるよ」と語り続けてくれたという。
そのお話から生まれた小さなお守りは、ベッド柵に結ばれたり、手首に巻かれたりする。糸はただ静かに、命と命のあいだに橋をかける。
かつて、ホスピス病棟で出会ったお母様。旅立ちの数日前、「家に帰りたい」とおっしゃった。
私たちはお連れしたが、急な階段を前に、ご本人が静かに首を振られた。帰りたい場所があっても、帰れない現実がある。人生とは、ときにそういうものだ。
それでも数日後、小さな頃に別れた娘さんと息子さんに抱きしめられ、大好きだった朝の連続ドラマが流れるその時間に、お母様は日常のなかで旅立っていかれた。特別な舞台ではなく、いつもと変わらぬ朝の光の中で。
ご家族は涙を流しながら、「こんなふうに送れるなんて、思っていませんでした」と言われた。
命は壮大でありながら、実にささやかなものの中で終わっていく。ドラマの主題歌、子どもの腕のぬくもり、そして一本の赤い糸。
私たちは皆、見えない糸でつながっている。その糸に気づいたとき、旅立ちは別れではなく、深い抱擁へと変わる。
今日もまた、赤い糸が誰かの手に渡る。結ぶのは私ではない。心と心が結ばれることを教えてくださった利用者様に感謝、合掌
文責 柴田久美子

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