看取り士日記(313)~四十九日の奇跡「再会」~
桃の節句。女の子が産まれると、雛人形を飾り誕生を祝い家族皆で健やかな成長を願う日。
施設での臨終の立ち会いから自宅でのお別れ。葬儀社の紹介と四十九日の訪問のご依頼をいただく。2週間後と四十九日法要の後に伺うことになった。
1回目の訪問日。この日に合わせて再会した姉妹は、ようやく話せる状態になったと安堵の表情を浮かべた。看取りの場面をゆっくりと回想しながら、ひとつひとつ丁寧に話される。
2年前に遡り、看取りを受け入れるまでに起こった数々の奇跡。すべてお母様がプロデュースしていたことに気づき、ご家族はあらためてその偉大さを知ることになった。
「どんな状況になっても母のことを信頼しきって委ねている看取り士の存在が大きかった」「あの場所だけ次元が変わっていたのかもしれない。そう思うと全て納得ができます」と。
姉妹がお互いの思いを共有することで“本当にこれでよかった”と安心感を得る場面でもあった。
「不思議と何の後悔もなくすっきりしています」
「疲れているのになぜか体調が良いです」
2回目の訪問、開花のはじまりを告げる沈丁花の香りに心躍らせる。
四十九日法要が終わり、徐々に日常に戻ってきたと話される。それは納骨の時の話だった。数年前旅立ったお父様の遺骨を目にした姉妹は、お父様がお迎えに来てくれたと感じたという。一致したおふたりの思いだった。
「お父さんに会えた。お母さんもお父さんに会えた。」
この時からお母様だけでなく、お父様にも思いを馳せる。
「日常近くにいるような感覚で何も怖くない。むしろ自然なことだと思えます。」
微笑みの中で、お仏壇にはおふたりの戒名が並んでいた。
いのちの誕生を両親が祝福してくれたように、看取りは命を繋いでくれた両親への恩返し。旅立ちから四十九日は、あの世とこの世の魂の交流ができる期間という。魂の繋がり、家族の絆は永遠であることを教えてくださった魂の存在に感謝 合掌
担当看取り士 尾美恵美子
文責 柴田久美子