看取り士日記(281)~全てを幸せに導いて~
大輪のひまわりの花が元気をくれる季節。
看取り士清水さんからの報告が入る。
育ての母である祖母との別れは一人では受け止めきれないと、看取り士のご依頼を受ける。
緩和病棟の病室では、優しく声をかけながら、全身に触れ、昔話をゆっくりと聞かせていただく。その時、偶然にも依頼者のお父様がお見えになる。
病室に入るなり、椅子をベッドから遠ざけて座られるお姿に、長年積み重ねて来た、お父様とお祖母様の距離感と、違和感のある関係性に気付く。
ご依頼者様によると、幼い頃にお父様が体験した辛い経験が、優しさを行動には移せない状況を生み出し、他人行儀な様子だった。
ご依頼者様がお父様に丁寧に容態とお気持ちを伝えていくと、距離が縮まり、やがてお祖母様のベッドを囲み、楽しい思い出話で会話が弾む。そして、病室を出る最後の最後に、お父様が初めて頭を撫でて言葉をかけて帰って行かれた。ご依頼者様にとって、お父様がお祖母様に触れているのは、これが初めて目にした光景だった。
旅立ちはその日の夜、突然に訪れる。
その後、ご依頼頂いたお孫さんから届いた手紙には、下記のように書かれていた。
「父との触れ合いと、孫である私との会話を聞いた後、祖母はすーっと息を引き取りました。
身体が温かいうちは背中に手を入れて、抱きしめることができました。お話を聞いていたおかげでしっかりと祖母のエネルギーを受け止めることができ、私は自分でも不思議な程、心穏やかです。祖母の最期は神々しく美しい寝顔でした」
旅立たれる方はまさに神仏となられ、全てを幸せに導く力を持ち合わせていると再確認させて頂く。その偉大さに触れさせて頂いたことに感謝、合掌