看取り士日記(346) ~愛と共に生きること~

看取り士日記(346) ~愛と共に生きること~

2024年01月11日(木)5:59 PM

 

「父が入所中の施設から、容態が変化したため看取り体制に入りますと説明がありました」と戸惑いながら息子様から看取り士依頼の電話をいただいた。

 

 そして旅立ちの時、息子様から連絡が入った。看取りの作法をしていただく様にお伝えして深夜車を走らせた。入室すると、息子様はお父様を抱きしめられ、枕灯に照らされたお二人のお顔は優しいほほ笑みを浮かべ「お父さん、よく頑張ったね、ありがとう」と頬を合わせた息子様は、お父様に優しく抱かれる幼子に戻られている。息子様が「母にも抱きしめてもらいたい」とおっしゃられ、仮眠をされていたお母様にベッドに腰かけ抱きしめていただくと、ゆっくりと頬を撫ぜ「ありがとう」とつぶやく様に話しかけられた。「母は父の事が大好きなんです」と息子様は話された。

施設との約束で看取り士は訪問開始1時間後に退室、息子様は疎遠になっているお姉様への連絡を迷われていたので、必ず連絡していただく事と、葬儀会場へ移られる時にはまた訪問することを約束して退室した。

 

葬儀会場へ移動後、再度訪問、お姉様家族もいらっしゃる。息子様は「姉と姉家族にも看取りの作法で抱きしめて欲しい」と話されており、お姉様の事を大切に思っていらっしゃる気持ちを受け止め、お姉様にも抱きしめていただくと「会いに来なくてごめん」と声をあげて涙を流され、ご家族皆様がそのご様子にまた涙を流された。息子様も「よかったね、お父さん、お姉ちゃん、よかったね」と何度も声をかけられた。お婿様、お孫様も順に抱きしめられ、涙と一緒に感謝の気持ちをゆっくりと伝えられた。長い時間、ご家族様交互に抱きしめ、お父様の大きな愛に抱きしめられてご家族様の気持ちが一つになっていかれた。その夜、息子様はお父さまに添い寝され額をくっつけて眠られたと嬉しそうにお話しくださった。

 

初七日訪問では、「これからは自分のために生きていきたい」と微笑みながらおっしゃる息子様の言葉を横で笑顔で受け止めているお母様。お父様の介護の10年間と看取りきられた体感は息子様の生きる力となっていらっしゃった。「一人ではなく、父と二人ですね、一緒に幸せになります」とおっしゃる息子様の穏やかな笑顔と美しい涙は次への希望に繋がっている。

看取りの時、ご家族様が丁寧にご自分の心を感じながら過ごされることは、大きな生きる力に繋がっていく事を教えていただいた事に感謝 合掌

 

   看取り士 白瀧貴美子

                  文責 柴田久美子

 

 

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