看取り士日記(288)~最期の温もりに包まれて~

看取り士日記(288)~最期の温もりに包まれて~

2019年03月11日(月)6:55 PM

 うぐいすの鳴き声に春の足音が聞こえる季節。
 看取り士さんから1通の手紙が届く。

 93歳の誕生日を迎えて約一か月。突然の意識消失で救急搬送された祖母は、癌の転移、心臓の機能低下により、老衰になるだろうと医師から説明を受けました。3年程前に胆石症で手術をしており、その頃、癌の告知、半年程の余命宣告も受けていました。そのため延命治療は望まないことをお伝えしました。
 私が小学校高学年より同居し始めた祖母。畑や花が好きで、暑くても寒くても朝から晩まで庭で土いじりをしていました。普段背中が曲がっていても、山へ山菜取りに出かけると背筋が伸び、いきいきとしていました。

 残された祖母との時間を大切に。病院で毎日触れ、呼吸を合わせ、声をかけました。癌の痛みを感じているのか苦痛な表情を見せていましたが、看取りの作法を取り入れると穏やかな表情に変わっていきました。
 祖母が育てていたカボスを手に持ってもらったり、祖母の住んでいた山が見える位置に咲いていたコスモスを持っていきました。臨終の後、好きだったブドウの果汁で口腔ケアを行い、私の車の助手席に乗って自宅へ帰り、柚子の香りの入浴剤を使って清拭をしました。

 不思議なことですが、真夜中の運転中、祖母に見せたかった景色の場所では霧がかかりました。臨終後は紫色の着物に袖を通し体位変換をした際には二度も声を聴くことが出来ました。表情も柔らかく、祖母からの「ありがとう」がそこにありました。朝日が差し込むまで隣に寄り添い、手を繋ぎました。「大丈夫」「ありがとう」。たくさん祖母に伝えた分、陽が昇ってからは「大丈夫」「ありがとう」を鳥や風の声にのせて祖母が私に返してくれました。
 自らの身体で最期の温もりを教えてくれた祖母は、看取り士としての道を応援してくれているように思えました。

看取り士 円城寺優子


 命のバトンを受けわたし、命そのものを見せてくださった幸齢者様に感謝 合掌



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