看取り士日記(317)
看取り士日記(317)~寄り添いから生まれるハラスメントにならないために~
「感謝」が花言葉の白いダリアが庭先に咲く季節になった。
6月26日朝日新聞、土曜日版フロントランナーに取り上げられ、たくさんの命の相談が入る。そんな中、看取り学講座受講中の70代の男性が「上野先生の『お一人様でも自宅で死ねる』という著書を読んで僕もそうしたいと思う。だが周りの人が『もうそろそろ施設に入ったら』と勧める。どうすればいいのか。困っている」と相談を受ける。
ちょうどその時、お一人様見守りサービス中の80代の女性が「応答なし」状態になる。何度電話してもお出にならない。担当の看取り士に訪問を依頼する。他の講師に講座をお願いして、現場の看取り士派遣とセコムの駆けつけサービスに連絡する。そして携帯とにらめっこ。
いつも使っていらっしゃるバイクが外にあることを確認して一安心。だが入浴中の事故死が多い一人暮らし。何事もないことを愛を込めて祈る。心がはち切れそうで思わず携帯電話を抱きしめてひたすらに祈る。近ければ当然、飛んでいった。そう思う心がもう1人の家族なのだ。命を命で受け止めることの深い意味を想う。
家の中にはいらっしゃらない。いつもの携帯も居間に置いたまま。
困り果ててあちこちに電話する。そして数時間後に発見。緊張の糸が切れ一人、安堵の涙が流れる。
終了後に東洋経済オンラインで私どもの記事を書いてくださっている荒川氏の記事「寄り添いから生まれるハラスメント」という文章を読む。寄り添いをハラスメントにしないための文章だった。今日のご利用者様にどんな言葉をお掛けするのが良いかを思う。どんな日常の暮らしをなさっているかを知り得ない私。自分の気持ちを押し付けないサービス、相手の心に踏み込みすぎないこと、自己満足にならないようにと思う。看取り士の存在が心の支えになることを祈りながら今日の出来事を受け止める。
寄り添うことの深い意味を教えてくださった利用者様に感謝 合掌
文責 柴田久美子