
看取り士日記(365)~命をゆだねる~
2/10 お看取りの依頼が入る。
ご依頼主様はご家族ではなく長年のおつき合いのある A様
お看取りされるB様は水分、食事共にほとんど召し上がらない状況。水分も1口、2口飲まれたとの記録。排泄も少量ずつの状態。
お目にかかってご挨拶すると目を丸くしてじっと見つめられた。目に力がない。お声掛けにゆっくりうなずいたり首を横に振られたりなさる。そのゆっくりの様がとても穏やかに感じた。点滴を訪看さんがなさったが、もう入らないというお声。37℃~38℃の熱が続いておられるので水分を摂って欲しいケアの方。思いが強く感じられた。
看守りの為にボランティアエンゼルチームが入られる。
意識低下と呼吸の変化にご依頼主様、大変不安なご様子にてお電話する。お1人で逝ってしまわないかととても不安との事。不安をゆっくりお聞きして「死はいつ、どこで、だれが、どのようにしておとずれるのかわからないものです。生きておられる間ずっとかかわって下さった事が本当に尊いですし、どんな亡くなり方をしたとしても、死ぬ瞬間までがその方の生き方ですので、例えどんな事になったとしても、その方の生き方であり逝き方ですからそのまま尊重いたしましょう。大丈夫ですよ。」とお声掛けする。フッと緊張しておられた心の糸がゆるんだご様子。きっと抱きしめられて逝かれると根拠のない思いで一杯になる。
その3日後、呼吸が更に変化して意識も全くもどらない、とご連絡を受けお伺いする。お部屋の空気がやわらかい。関係者様皆でお側につく。夜明け前、ご依頼者様の腕にしっかりと抱かれ呼吸は荒いもののとてもとても穏やかなお顔。この世で受けた全てのエネルギーを宝石のように輝かせながら静かに息が止まった。
亡くなられたあとも、縁者の方が替って抱きしめられる。“暖かい”と静かにつぶやきながらやさしい表情のお顔を見つめ「いいお顔されてます。こんなに穏やかないいお顔今まで見たことないと思う。」とゆっくりと看取られた。
その後、ご依頼主様のご意向により日本看取り士会のお墓にお納めする。
看取りの時間からその後まで命をゆだね、生涯の旅路に寄り添わせて頂けたことに心から感謝 合掌
担当看取り士 松山 照紀
文責 柴田 久美子