看取り士日記(332)~点滴はいらない~

看取り士日記(332)~点滴はいらない~

2022年11月14日(月)3:23 PM

 

紫陽花の咲く頃、お母様が危篤となり、おられた施設から救急搬送され、一命はとりとめたが病院では、全く面会ができないと長女様より、ご相談の電話をいただく。

在宅での看取りも考え、すぐに看取りサービス桜のご契約をされる。


お母様は元看護師で、ご本人が延命はいらないと言っておられ、延命は断ったものの、病院では、点滴につながれ、浮腫がひどい。食事は全く取れない。1ヶ月がたち、療養型の病院への転院を進められるが、やはり、面会はできない。

自宅に帰ることは、次女様が大反対される。長年、お母様が歌体操などをしにボランティアをされていたもといた施設に戻られることに。


施設では、看取り期ということで、初めは週に15分の面会を許される。浮腫がひどく、点滴が入らなくてあざだらけ、もう、点滴はいらないと長女様は、ドクターに伝えるが、ドクターは、点滴を外すことは、殺人行為だと言われ、泣きながら電話が入る。

お母様は、もう話すことはできないけれど、目力と最後の力を振り絞り、手でいらないと点滴を振り払われる。旅立ちの20日前のことだった。


何度も危篤となり、施設に呼び出されるようになり、家族が駆けつけると小康状態になるお母様。厳しい面会制限の中、なんと最後の3日間は、夜間の寄り添いもできて、まさにお母様のプロデュース。看取り士も駆けつけさせていただき、看取りの作法をお伝えする。長女様はもちろん、次女様も看取りの作法でお母様を抱きしめてくださる。

看取りの作法をされて、お母様に“産んでくれてありがとう。育ててくれてありがとう。お母さんの娘で幸せ!”とつたえられ、お盆の中日にお母様は、旅立たれた。


ご自宅に連れて帰り、真夏だったが、2日間、ドライアイスは入れずに過ごされ、長女様のご希望で看取り士も一緒に一昼夜寄り添わせていただき、また、看取りの作法をしていただき、夜は添い寝された。お母様はどんどん美しく笑顔になっていかれた。ドライアイスを入れないことや旅立ちの後にご自宅に連れて帰ることも当初、反対だった次女様も、翌日来られたときに、“お母さん、笑顔になっている。こんなゆっくりとしたお別れができるなんて”と、ゆっくりと触れて穏やかな時間が流れた。

お母様の全てのプロデュ-スに心から感謝 合掌

 

担当看取り士 乗本奈穂美

文責 柴田久美子

 

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