看取り士日記(340) ~12歳 制服を着て~
春が近づいてきた3月1日。知人の葬儀社からの相談。内容は「亡くなったお子さん(12歳)に制服を着せて欲しい」とのこと。
亡くなって3日目。病院搬送後に受けた検査で《コロナ陽性》と判明したため、納体袋に入っている状態。亡くなる直前まで元気だった我が子が棺に納まり顔が見られない状態にご両親の心情を思うと早く何とかしてあげたいという思いに駆り立てられた。納体袋を開封。この日は、お顔を見て頂くところまで行い、2日後に中学校の制服が届くことになっているとのお話をお母様がして下さったので、その日に身支度を整えましょうと声を掛けた。
3日の午前中に訪問。納体袋に入れられた12歳のお子さんは何も身に着けていない状態。その姿をご両親には見せられないと葬儀担当者に伝え、ある程度まで私が着せることをさせて頂き、以降をご両親・ご家族にバトンタッチして身支度をお願いした。
事前に通夜の前、通常であれば納棺する時間だがご両親・ご親族にきちんとお別れをして頂く時間にしたいと葬儀担当者に相談、快く承諾してもらい「棺から出して布団に寝かせて抱いて看取りの作法をしてもらいたい」と言うと布団を準備して下さった。
通夜当日、セレモニーホールの和室で棺から出され布団に横たわるお顔は納体袋に入っていた時とは比べものにならない程に穏やかで子どもらしい表情に変わっていた。
告別式の日、出棺前のお別れの時間も私に任された。棺を開け最後のお別れをしてもらう時間。「これがお別れをする最後の時間です。触れて声を掛けてあげてください」と伝える。
火葬。炉の扉が開いた途端、お母様が「やっぱりだめ。やだやだ」と言いながら棺につかまり半狂乱になられ、車いすでの対応。しばらく泣き叫び「大丈夫。身体は無くなってしまっても魂はママと一緒にいるよ。ずっと一緒だよ。大丈夫。大丈夫」と声をかけ続け、暫くすると落ち着き見送ることが出来た。
「この人がいれば服を着て旅立てる、ママのことも助けてくれる」と今回は、12歳のお子様自身が私を呼んでくれた。このご縁に感謝 合掌
担当看取り士 鈴木 純子
文責 柴田久美子
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