看取り士日記(341) ~抱きしめられて~

看取り士日記(341) ~抱きしめられて~

2023年08月19日(土)1:09 PM

 

若葉が目にまぶしく映り始めた頃だった。

 

看取り学を学び、看護師で看取り士となられた方から、癌を患っていたお母様が体調を崩して看取り期に入ったので相談したいと連絡が入った。

看取りは看護師として、何度も経験しているが「命のバトン」をしっかりと受け取りたいとのこと。無償ボランティア、エンゼルチームのご依頼もいただいた。

 

お母様に、「触れていいですか」と、お声をかけるとしっかりと反応してくださり、大きくうなずかれる。お母様は、八九歳。お父様と2人暮らしだが、近くにご依頼者である娘様(次女)が住んでいる。お母様のご希望通り、自宅で看取りたいとのこと。すでに訪問診療は週2日入っておられた。

 

その日の夜中の0時を過ぎた頃、呼吸が変わった、血圧が下がったと連絡が入り、駆けつける。お母様は、娘さんの腕に抱かれて、看取りの作法で旅立たれた。穏やかなあたたかい優しい時間が流れた。お父様は、「まだ、あったかいなあ」と手を握られ、冷たくなってきたら、あたたかいところを探して触れられる。65年連れ添って来られた奥様だ。長女様も来られたので、その後、ゆっくりと看取りの作法をしていただいた。“お母さんにまだ、ありがとうと伝えてなかった”と、感謝の言葉を涙ながらに話された。

 

3日目が納棺式、お通夜、4日目に葬儀の予定となり、ご家族のご希望で、葬儀(神式)、火葬場、収骨と御一緒した。まさに看取り士は、もう一人の家族だ。収骨までの直会の食事会の時に、20人以上おられたご親族に長女様が感謝の言葉を共に、看取り士としてご紹介くださり、お母様の看取りのご様子をお話しされた。お父様は、その間、ずっと手を合わせてくださり、頭を深く下げて下さった。

 

看護師である次女様が、看取り学を勉強し、看取り士になったことからはじまり、全てはお母様のプロデュースであったとあらためて感じた。看取りの尊い場にお呼び頂きましたことに感謝 合掌

 

 

担当看取り士 乗本奈穂美
文責 柴田久美子

 

 

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