
看取り士日記(360) ~ガッツポーズの長女様~
秋の気配を感じる9月、薬剤師協会様での講演をした次の日、「私の母はターミナルで施設にいます」とご相談のお電話。
1か月後の朝、「母が施設で亡くなりました。来ていただけませんか?」とご依頼を頂く。
施設より葬儀社へ搬送されたお母様。伺うとストレッチャーに乗せられたままのお母様と不安そうなご家族様。
その日は和室が一杯。「看取りの作法ができるスペースはなく、夕方17時には冷蔵安置になります」とのこと。葬儀社様、喪主様と話し合いに。「別会場なら24時間冷蔵せず安置できます」と移動の話を勧める中、「部屋があれば作法はできますか?」と妹様。この一言で状況が変わり、お母様を再び葬儀社から家に搬送していただく。
夕方、お家に伺うとお孫様10人、ひ孫様17人の大家族が駆けつけ、お母様を遠まきに囲んで、ずらりと座っていらっしゃった。
初めて看取り士なんて聞くご家族様。子供達にもわかるように、プラスの死生観をお伝えする。皆でお母様に触れながら「まだ温かいんだね」と。
ご姉妹から看取りの作法をお伝えする。長女様は、涙いっぱいに「看取り士さんいなかったら、今頃どうなっていたんだろう」と。中学生のひ孫様達も「おばあちゃん、ありがとう」と泣きながら膝枕をしたまま離れられない。まだ2歳のひ孫様も、皆の真似をして、小さな両手でおばあちゃんの身体に触れている。
何世代にも繋がれていくお母様の命のバトン。お母様は笑っているかのような穏やかな優しいお顔に変わる。廊下で小さくガッツポーズされた長女様
「一番、願っていた最期になりました。全ては母の計画通り。家に帰れて喜んでくれたかと。ドタバタな状況でしたが、看取り士さんお見事でした。最期に親孝行ができ、本当に運命の出会いでした。」と。末の妹様は「母が本当に家に帰りたかったことが、よくわかりました。」と深々と頭をさげられた。
初七日訪問でお伺いすると、母親をちゃんと看取れたというご姉妹の晴れ晴れとした笑顔。
大家族の絆を再び繋いだ母の大きな愛を教えてくださったお母様に感謝
合掌
担当看取り士 山口 朋子
文責 柴田久美子