看取り士日記(357) ~臨終後の看取り士の役割~
「母が1時間前に亡くなりました」との娘様からのお電話。「まずは向かおう!」とバイクを走らせる。移動中、何度も呼吸法をし、心身共に落ち着かせる。
霊安室に到着。孫娘様が一人、どれ程不安だったことだろう。ストレッチャーの柵を外し、背中との隙間に手を入れ、お祖母様のあたたかさを受け取っていただくよう伝える。「わぁ!こんなにあたたかいんだ!」
「葬儀社にもついてきて欲しい」とのご依頼をいただく。お坊さんが到着されるまでに、看取り士のいる意味や作法を説明し、孫娘様と婿様に抱いていただく。
戒名を選ぶ場面、枕経、お焼香、遺影の写真をお持ちになる場面などに立ち会わせていただいた。
「看取り士さんがいてくれて良かった。電話の時にドライアイスは24時間ダメ!という言葉を聞かなきゃ、完全にお母さんを冷やし固めるところでした」と。
また、色んな方がいらっしゃる度に「看取り士さんのお陰で今も母があたたかいんです」と誇らしく語っておられ、安心する。
お母様がどなたかに抱かれる度に身体があたたかくなり、孫娘様と娘様が抱かれた時「今、笑ったよね?」と複数の方が声を上げられた。
訪問医さんやデイサービス、ヘルパーさん、ご友人方にも看取りの作法を行っていただいた。時折、娘様も席を外される時は私が触れ続け、命のバトンを受け取り続けた。デイサービスのスタッフさんの生歌を気に入っておられたようで、看取りの作法をされながら、演歌や歌謡曲、童謡など6〜7曲を歌われ、故人も穏やかな表情をされていた。
「メッセージを書いて欲しかったけど、準備が間に合わなくて残念」と未明にメールが届いた。翌日再訪し、折り紙の裏にメッセージを書き、折り鶴にして棺に納めていただく。
私が葬儀社を退室する時、お母様のお布団はしわくちゃだったが、それは多くの方々が触れ、抱かれたことを意味していた。看取りは誕生と同じ愛の時間と教えて下さったお母様に感謝
合掌
担当看取り士 花木 恵
文責 柴田久美子